病院や介護施設で身体に障害のある方がリハビリテーション(以下リハビリ)をしている光景を目にしたことがあると思います。
そのリハビリをサポートしてくれるのが理学療法士で、現場ではPTさんと呼ばれることもあるようです。
医療の現場に留まらず、介護の現場やスポーツ分野でも活躍する理学療法士は近年、注目の職業となっています。
また、高齢化社会が進んでいるなか、身体機能が低下している高齢者のADL(日常生活動作)をサポートする理学療法士は現在の日本に欠かせない存在でもあります。
このように、リハビリのプロフェッショナルとして働く理学療法士とはどんな仕事をしているのでしょうか。
この記事では、老人ホームで働く理学療法士にスポットを当てて、理学療法士をあらゆる角度から解説しています。
理学療法士の老人ホームでの役割
理学療法士の活躍する現場は病院をはじめ、老人福祉施設から児童福祉施設まで様々な施設があります。
その中の1つ、老人ホームで暮らす高齢者は皆さん穏やかに楽しく暮らしているイメージがあり、リハビリを必要としている方がいるとは思いませんよね。
しかし、加齢に伴う身体機能の低下により、ADLが思うようにはかどらない方もいます。
そのような高齢者のADLが維持・改善するようにリハビリをサポートしてくれるのが理学療法士の主な役割です。
また、身体機能の回復には欠かせない、高齢者お一人お一人の身体に合わせた杖や歩行器などの福祉用具の選定も理学療法士の役割となります。
ここでは、老人ホームで働く理学療法士の役割であるリハビリ、スケジュールやスキル、タイプ別に見たおすすめの老人ホームを紹介しています。
老人ホームでの理学療法士のリハビリ
何と言っても、理学療法士の大きな役割は老人ホームで暮らす入居者さんのリハビリを行うことです。
老人ホームの入居者さんに対して、立つ・歩くといった基本動作をはじめ様々なリハビリを施し、自宅復帰や身体機能の維持・改善を図ることを目標としています。
老人ホームに入居している高齢者は加齢による身体機能の低下があるため、劇的な改善を見ることは難しいのが現状です。
しかし、理学療法を用いたリハビリ行うことで入居者さんの身体機能に応じたサポートが可能となります。
また、高齢者が楽しく積極的にリハビリを行えるように考慮、提案することも理学療法士の役割です。
毎日を楽しく過ごしてもらいながら身体機能の維持・改善がみられることで、入居者さんの自己肯定感も高まり、精神的機能の低下を防ぐ重要な任務も果たしています。
老人ホームでの理学療法士1日のスケジュール
施設によって多少の違いがあるようですが、理学療法士の1日はだいたい次のようなスケジュールになっています。
8時頃までに出勤
当日、担当する入居者さんの介護記録を確認
9時 朝礼
老人ホームの施設長や介護士、看護師などと情報の共有・交換
9時15分 個別のリハビリ開始
介護士や看護師、ほかのリハビリスタッフと連携しながら、入居者さんの個別リハビリを開始
12時半 昼休憩
昼食や休憩、その際は入居者さんたちと会話を楽しむこともある
13時半 個別のリハビリを開始
午後、担当する入居者さんの個別リハビリを開始
15時半 集団リハビリ
老人ホームのフリースペースを利用して、入居者さん達の介護予防体操を指導・介助
16時半 リハビリ記録や備品整理
1日に行ったリハビリの状況等を記録、リハビリ関連の備品整理
17時 介護スタッフへの指導
入居者さんの身体の変化や気づきなどを共有、ケアをするポイントなどをリハビリの観点から指導
18時 申し送り・退勤
業務記録を作成、介護士や看護師に申し送り事項を伝達、何も問題がなければ退勤
老人ホームで求められる理学療法士のスキル
老人ホームなどの介護施設では病院に比べるとリハビリ職が理学療法士だけの施設も少なくありません。
そのため、入居者に対してのリハビリスタッフの数も足りてないのが現状です。
このような背景を考えると、リハビリ中に入居者が急な体調の変化を訴えた場合に理学療法士自身が対応しなければならないこともあります。
老人ホームでは病態が落ち着いている入居者にリハビリを提供していますが、リハビリをはじめる前はあらゆるリスクがあることを念頭に置いておくことが必要です。
そしてもう1つ、リハビリスタッフが理学療法士一人体制の老人ホームでは、リハビリの頻度やゴールの判断、スケジュール調整、書類の作成なども一人で行うことになります。
そのため、老人ホームなどの施設で働く理学療法士にはマルチタスクのスキルが求められるのです。
タイプ別理学療法士におすすめの老人ホーム
一言で老人ホームと言っても、その種類はたくさんあります。
自分にはどのような老人ホームが相応しいのか知っていると働く職場を選ぶ際の目安になりますね。
高齢者の生活環境を少しでも楽にしてあげたいなら特別養護老人ホーム
終身利用が可能なため、身体機能の改善というより維持を目的としたリハビリが多くなります。
そんなリハビリで、入居者さんが少しでも楽に過ごせるように、また介助者の負担も軽減できるようにサポートしたいと願う理学療法士におすすめです。
自宅復帰を目指す高齢者をサポートするなら介護老人保健施設
何かしらの病気やケガで身体に障害が起こり病院に入院していた高齢者が退院後、自宅復帰を目指し入居するところが介護老人保健施設です。
そのため、短期間(原則3ヶ月)で入居者さんの身体機能を回復させ自宅復帰してもらわなければなりません。
そんな入居者さんのサポートに、自分の持っている知識や技術を全力投球したい理学療法士におすすめです。
高齢者の生活に寄り添いながらサポートするなら介護付き有料老人ホーム
高齢者の日常生活に寄り添いながら身体機能をサポートできるのは介護付き有料老人ホームです。
入居者さんの充実した生活を支えるためのリハビリを身近でサポートしていきたい理学療法士におすすめします。
老人ホームで働く理学療法士、こんな人におすすめ
忍耐力がある人
理学療法士とは言え、人間です。
高齢者のリハビリで思うような結果につながらずイライラしてしまうこともあるでしょう。
また、高齢者であるためにコミュニケーションがうまくとれないこともあります。
そんな場合でも、根気強く高齢者と向きあっていく忍耐力が求められます。
健康管理能力の高い人
高齢者のリハビリを実施するには体力的な負担がかかるので、健康に自信のある理学療法士がおすすめです。
また、健康的な身体を目指す高齢者のリハビリを行うのに、理学療法士自身が不健康では説得力に欠けてしまいますよね。
日頃から、自身の健康管理能力の高い人が求められます。
コミュニケーション能力が高い人
リハビリを実施する際は、高齢者との信頼関係を築くことが重要になります。
高齢者の話に耳を傾け、適切な対応ができるコミュニケーション能力が必要です。
また、入居している高齢者だけではなく、そのご家族や介護士、看護師など他職員とのかかわりもあるため様々なシーンでのコミュニケーション能力が求められます。
理学療法士の収入
気になるのが理学療法士の収入です。
理学療法士の収入は働く施設形態や経験年数、また地域によっても大きく変わってきます。
厚生労働省が発表している令和2年2月の介護従事者平均月収によると、理学療法士(作業療法士・言語聴覚士なども含む)の平均給与額は358,560円になっています。
では、老人ホームで働く理学療法士の平均月収はというと、20~40万円くらいまでと幅があります。
しかし、前述にもあるように理学療法士は働く場所や年齢、勤続年数によって収入も大きく異なるのです。
また、一般的な介護職員の平均月収315,850円と比べると理学療法士のほうが4万円以上も多いことから、老人ホームで働くなら理学療法士として働くことをおすすめします。
理学療法士のニーズ
高齢化が叫ばれている日本ではますます高齢化が進むと予想されています。
そんな中、国家資格である理学療法士の活躍の場も広がりを見せているようですが、果たしてニーズはどうなのでしょう。
これまでは、医療の現場で働くことの多かった理学療法士ですが、高齢者の人口に伴い介護施設である老人ホームなどでリハビリを行うことはさらに増えてくるでしょう。
しかし、毎年1万人前後の理学療法士が誕生しているため、今後は飽和状態になるのではないかと懸念されているのも事実です。
今後も必要とされる理学療法士でいるためには、現在の知識や技術だけに満足せず常日頃から切磋琢磨して将来に向ける準備をしておきましょう。
理学療法士と作業療法士の違い
一般の人はリハビリをしてくれる人の職業はみんな同じだと思ってしまいますよね。
実は、同じリハビリ職でもサポートの仕方が違うので職業名も違います。
理学療法士は、身体機能が低下している方の基本的な運動動作をサポートしてくれます。
たとえば、「立ち上がる」・「起き上がる」・「寝返る」・「歩く」などの基本的動作をリハビリ訓練。
一方、作業療法士は身体機能が低下している方の日常生活をスムーズに送ってもらうための応用的動作をサポートします。
たとえば、日常的に行う「食事をする」・「顔を洗う」・「字を書く」などの応用動作をリハビリ訓練。
大きな動きのリハビリは理学療法士、小さな動きのリハビリは作業療法士と覚えておくと分かりやすいですね。
そして、両者に言えることは「人の役に立つ職業」であること、高齢化社会である日本には「不可欠な職業」だということです。
まとめ
ここまで、老人ホームで働く理学療法士にターゲットを絞って解説してきました。
現在は活躍の場も増えている中で、老人ホームに勤務する理学療法士さんはお年寄りに優しい方が多いのではないでしょうか。
老人ホームでは高齢者の生活に寄り添ったリハビリが提供できます。
それだけに、入居している高齢者が暮らしやすい環境を整えることも理学療法士の大きな役割だと言えそうです。
今後の高齢化社会を支えるためにも理学療法士の活躍を期待したいと思います。
あなたも、日本の将来を支える理学療法士になってみませんか!