特別養護老人ホーム(特養)への転職は介護未経験の人でも十分に成功できます。特養で働くには資格が不要であり、介護現場は働きながら業務を覚えていく職場だからです。ただし未経験で特養に転職するのであれば、事前に知っておいた方が良いこともいくつかあります。そこでこの記事では介護未経験で特養に転職する際に知っておきたいことや、特養に転職するメリットとデメリットを解説します。特養への転職に興味のある方は是非参考にしてみてください。
介護未経験で特別養護老人ホームに転職する際に知っておきたいこととは?
介護未経験で特別養護老人ホームに転職する際に知っておきたいことは3つあります。
- 特養は求められる介護スキルが高い
- 重度の利用者は手のかかる方が多い
- 特養の勤務は24時間体制のシフト制
それぞれ順番に解説します。
特養は求められる介護スキルが高い
特養の介護現場では高い介護スキルが求められます。特養は原則要介護3以上の高齢者を受け入れる介護施設であるため、重度の利用者をメインにケアする必要があるからです。他の介護事業所と比べると、受け入れる利用者の介護度は重くなります。以下の表は主な介護施設の利用条件の一覧です。
介護施設の種類 | 利用者の受け入れ基準 | 介護施設の特徴 |
デイサービス | 要介護1以上 | 日帰りの介護施設 |
介護付き有料老人ホーム | 施設毎に異なる | 施設毎に異なる |
サービス付き高齢者向け住宅 | 60歳以上の高齢者または60歳未満の要介護者 | 自立した生活を送れる高齢者がほとんど |
グループホーム | 要支援2以上の認知症患者 | 少人数単位のユニットケア |
介護型ケアハウス | 要介護1以上 | 重度の利用者は少ない傾向 |
特別養護老人ホーム | 原則要介護3以上 | 重度の利用者が多い傾向 |
介護老人保健施設 | 要介護1以上 | リハビリに特化しており医療設備が充実 |
介護医療院 | 要介護1以上 | 高度な医療的ケアが常時必要な利用者 |
介護付き有料老人ホームは種類や施設の方針により受け入れ基準が異なり、施設ごとの特色も大きく異なります。
利用条件の緩い介護施設はある程度自分の身の回りのことをできる利用者が多く、重度の要介護者は受け入れを拒否する場合もあります。要介護1以上を受け入れ条件としている介護施設には重度の利用者が在籍している場合もありますが、自立した生活が可能な利用者も多数在籍しているのが特徴です。利用条件を原則要介護3以上としているのは特養のみであり、他の介護施設よりも重度の利用者が多数在籍しています。重度の利用者を中心にケアする必要があるため、特養で働く介護職員には高いスキルが求められているのです。
重度の利用者は手のかかる方が多い
重度の利用者は手のかかる方が多い傾向にあります。ひとりではできないことが多いので、軽度の利用者よりも多くのサポートが必要となるからです。たとえば軽度の利用者であればひとりで安全にトイレを使用できる方も多くいます。ですが重度の利用者がトイレを安全に使うには、介護職員によるサポートが必要です。介護職員のサポートがあっても安全にトイレが使えない利用者は、おむつ対応となる場合もあるでしょう。重度の利用者は軽度の利用者と比較して、ケアに多くの手間がかかります。そのため特養は重労働の現場だといわれているのです。
特養の勤務は24時間体制のシフト制
特養の勤務は24時間体制のシフト制となります。利用者が活動している日中だけでなく、夜間もケアする必要があるからです。正社員はシフトに穴をあけないように早番、日勤、遅番、夜勤などを交代で務める必要があります。非常勤のパート職員は特定の時間や曜日だけ働くこともできますが、正社員であれば働く時間や曜日が不規則となるのが一般的です。
介護未経験で特別養護老人ホームに転職するメリットとは?
介護未経験で特別養護老人ホームに転職するメリットは3つあります。
- 特養は介護事業所の中でも特に給与水準が高い
- 特養の業務を通じて高い介護技術を身に着けられる
- 特養は利用者や家族から感謝される機会が多い
それぞれ順番に解説します。
特養は介護事業所の中でも特に給与水準が高い
特養は介護事業所の中でも特に給与水準の高い施設です。重度の利用者のケアを中心に行うため、他の介護事業所よりも良い待遇でなければ職員が集まりません。特養であれば介護介護の実績や資格がなくても、はじめから高い給料で働くことができることでしょう。グループホームやケアハウスは軽度の利用者のケアが中心ですが、給与水準はそこまで高くありません。夜勤がないデイサービスやデイケアでは夜勤手当がないので給料も控えめになります。介護でバリバリ稼ぎたいのであれば、特養への転職を目指すのが良いでしょう。
特養の業務を通じて高い介護技術を身に着けられる
特養では日々の業務を通して高い介護技術を身に着けられます。重度の利用者のケアには高い技術力が求められるからです。最初は一つひとつのケアが難しく感じられるかもしれませんが、慣れてくれば介護未経験の人でも問題なく業務を行えるようになります。何らかの事情で再度転職を考えなければいけなくなった際も、特養で培った介護技術は強い武器になるでしょう。日々の業務で介護の技術を磨きたいと思うのであれば特養で働くのが一番です。
特養は利用者や家族から感謝される機会が多い
特養では利用者や家族から感謝される機会が多くあります。重度の利用者や家族は介護の大変さを良く知っている傾向があるからです。特養の利用者の多くは重度化により家族の手に負えなくなっている場合があります。中には現場のケアに対して不満を持ったり、特別扱いしてほしいと思う利用者や家族もいるでしょう。ですが毎日重度の利用者のケアを行っている特養の介護職員に感謝している利用者や家族はたくさんいます。ふとした利用者へのケアの合間や、面会で家族と関わりを持った際に感謝されることは多くあるでしょう。
介護未経験で特別養護老人ホームに転職するデメリットとは?
介護未経験で特別養護老人ホームに転職するデメリットは3つあります。
- 特養は重労働の現場で身体的負担が大きい
- 特養では認知症の利用者との意思疎通が難しい場合がある
- 特養では現場職員の人間関係が悪化しやすい
それぞれ順番に解説します。
特養は重労働の現場で身体的負担が大きい
特養は身体的負担の大きい職場です。体力に自信がないとなかなか仕事が続きません。介護の仕事を始めたばかりのころは、とくに業務をきつく感じることもあるでしょう。介護未経験の人が特にきつく感じる業務は以下のようなものがあります。
- 寝たきりの利用者のおむつ交換
- 重度の利用者の入浴のケア
- 寝たり起きたりする手伝い
おむつ交換は中腰の姿勢を維持するため腰への負担が大きく、入浴は高温多湿の浴室で長時間ケアを行うため体力の消耗が激しい業務です。何人もの利用者が寝たり起きたりするのを手助けするには、高い体力とスキルが必須となります。特養の現場は重労働で体力勝負だといえるでしょう。
特養では認知症の利用者との意思疎通が難しい場合がある
特養に在籍する認知症の利用者は意思の疎通が難しい場合があります。重度化により言葉や文字の認識、または自分の意思表明が難しくなっているからです。利用者が職員の言葉の意味を理解できない、または理解しても数秒で忘れてしまうことも多くあります。認知症の利用者とのコミュニケーションにはある程度の慣れが必要です。最初は利用者との意思疎通の難しさに戸惑うことも多いでしょう。
特養では現場職員の人間関係が悪化しやすい
特養の人園関係は悪化しやすい傾向にあります。重労働で責任が重い仕事であり、職員同士の介護観もそれぞれ異なるからです。それぞれの職員の責任感や能力の差、仕事に対して重視するポイントによってすれ違いが起こってしまいます。
- 利用者の生命や生活を守るために働いている職員
- 日々の業務を問題なくこなすために働いている職員
- 先を見据えた考えを持ち多くの業務をこなしている職員
- 目の前の仕事に手一杯でやっと業務について行っている職員
- 利用者が人生の幸せを感じられるように働く職員
- 利用者の安全や業務の合理性を追求する職員
特養の介護現場には様々な考え方の職員がいます。重労働の現場であるため職員の心に余裕がなくなり、考え方の違いから職員同士が衝突してしまうことも多いです。特養で働くのであれば、人間関係を上手く構築できる技術が必要となるでしょう。
特別養護老人ホームに介護未経験で転職するなら努力が必須!
いかがだったでしょうか?介護未経験で特養に転職する際に知っておきたいことや、特養に転職するメリットとデメリットについて解説しました。
特養は重労働の現場であり、未経験で転職するならば相応の努力が必要な職場です。現場で求められるスキルをスムーズに身に着ける必要があります。ですが特養の給与水準は高く、やりがいのある仕事です。体力に自信のある方であれば、必ず活躍できる職場だといえるでしょう。この記事を参考にして是非ともあなたにぴったりの職場を見つけてみてください。